完全復活 Willie Clayton
手元のウィリー・クレイトンのアルバムを調べてみたら23枚だった。
僕が持っている数だから、何枚かはほかにあるかもしれない。
毎年必ず一枚、ときによっては二枚をリリースし続ける。
考えてみるとこれほどの活動を長期に渡って行っているソウル・シンガーが他にいるだろうか。(ジェームス・ブラウンが近いかもしれない)
数を出すということは、コストに見合う売上を得ているということで、そんなシンガーに復活とはまさに失礼な、理を知らない戯言に思える。
しかし、それが本音なんだなぁ。
Hiに未熟な録音を残した彼が驚くべき大成を見せるのは80年代前半のインディ録音だった。
モダン・ソウルというジャンルがかって日英のソウルファンのなかだけ存在したが、その動きを作ったのはウィリー・クレイトンだったと言ってもいいだろう。
私的な話だが、当時ジェネラル・クルックがプロデュースした必殺の"Tell Me"や"So Tied Up"に出会わなかったら僕は現役のソウルファンを続けていなかったと思う。
70年代までの既に消えてしまったソウルだけを繰り返し聴き続ける----そっちのほうがまともな人生だった気もするが、インディからメジャーの新録を追うようになったのは、まさにウィリー・クレイトン・ショックがあったからだ。
この勢いにのってポリドールというメジャーに移ったものの、セールスとしては惨敗。
数年の雌伏の時を待ち、南部の中高年黒人向けの活動を彼ははじめた。
どのアルバムも、タイロン・デイビス調の、つまりチタリン・サーキット向けの無難なソウル曲と、Z.Z.ヒル調のブルース歌謡で構成され、一言で表現すればマンネリな内容だった。
マンネリとはひどい言い方だが、歌の巧さは抜群だから、それでも退屈にはならない。
ところが前作くらいから内容が変わってきた。
この表現も彼には失礼だろうが、現代のシーンと再び切り結ぼうという気力が感じられるようになった。
そして今年の新作。
これは、はっきりと傑作だと思う。
アルバムとしては、彼の全キャリアを通じての最高作なのではないか。
なまじ活動が多すぎるだけに、今の彼を聴いていないソウル・ファンも多いと思うが、声を大にして言っておく。
「こんどのアルバムだけは聴いたほうがいいよ~!」
なおDVDが付属しており、なんとも猥雑なチタリン・サーキットでの彼のステージが納められている。
出てくる彼のファンの中高年黒人女性は、おしなべて小錦のような体型をしており、それに驚異を感じながら楽しく観させていただきました。
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