アーバンな試み Lew Kirton
彼の出生は西インド諸島バルバドス。
英語圏の黒人として、他にない例ではないが、当然幼少の頃のゴスペル体験のようなものがアメリカ黒人とは違っているのだろう。
それを知っているからかもしれないが、スケールの大きな歌唱なのにゴスペル臭さがないように思う。
その後カナダにも住んだことがあるそうだが、アメリカに移住。
サム&デイブのバンドでドラムを叩いていたという。
話題はそれるが、テディ・ペンダーグラスもブルーノーツのドラムから出発したという(最近、ごく初期のテディの録音を聴き、あまりのスタイルの違いに驚いたが)。
ルーとテディ、歌唱のスタイルについて近いものがあると思う。
ただし僕はテディの歌にあまり感心したことがない。しかし彼は大きな成功を収めた。
反対にルーの歌にはいつも惹かれてきたが、結局彼は大きなセールスを得ることができなかった。
この二人の間にある差はなんなのだろう。
そしてN.Y.のSilver BlueでInvitationsのリードとして録音のキャリアをスタート。
また余談だが、Invitationsは現在も活動を続けているようで、アルバムをリリースするという情報がある(ルーは残念ながら現在のメンバーではない)。
Invitationsを離れ1977年にMarilin(これもT.K.傘下)からシングルをリリース。
そして、先に紹介した1stにこぎつける。
だが、内容に比べては理不尽なほどの成功しか収められず、N.Y.へ舞い戻る。
そして1983年に発表されたのが今日紹介する2ndである。
切り捨てるような言い方をすれば、当時のブラック・コンテンポラリー・サウンドの時流にあわせ売ろうとしたという意図のアルバム。
よくありがちだが、特に抜きんでてはいないサウンドと曲で構成されている。
そのためか後のソウル・ファンの間での市場評価は1stとは明暗をわけている。
バブル期には1stは5桁の値段がつくこともあったが、この2ndは殆どプレミアムをつけられなかった。
だが、もちろんルー・カートンが歌うのである。
悪かろう筈がない。
ありがちな曲が並んでいると書いたが、反対の言い方をすれば聴くに耐えないような曲は皆無。
そして雄大なバラード"Always Will"がある。
この一曲だけでも値千金だろう。
あまりに過小評価を受けたこのアルバムは、つい最近日本のP-VineからめでたくCDになった。
もしかして、ルーが新作"Forever"を発表したのは、Expansion、P-Vineと続いたCDリイシューが引き金になっているかもしれない。
そうだとすれば(Expansionのやり方には眉をひそめているが)日英のリイシュー同盟が、彼を動かしたということになり大いに誇れることだ。
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