80年代名盤 Curtis Hairston
「歌えるシンガー」とは妙な表現で、歌えないシンガーがいたらお目にかかりたいものだが、その当時のいわゆるブラック・コンテンポラリー=略してブラコンの画一的な歌い方に食傷していたソウル/R&Bファンが、一歩踏み込んだ歌表現ができるシンガーを、そう呼称したわけだ。
グレン・ジョーンズ、シェリックなどを筆頭に、後で振り返ってみれば「いつの時代も素晴らしいシンガーはいた」という当たり前の事実を再確認できるが、今日紹介するカーティス・ヘアーストンもその一人だった。
リズム・ナンバーで抜群のノリを聴かせるシンガーで、聴けば聴くほど巧さがわかる。
80年代における、ディープな歌い手と形容してもいいのではないか。
しかし「歌えるシンガー」の殆どがそうだったように、シーンで長く活躍することは叶わなかった。
その不運が、ソウル/R&Bファンにとって愛おしさに変化する。
カーティス・ヘアーストンはノース・キャロライナ出身。
N.Y.のPrety Pearlでのリリースをキャリアの皮切りに、B.B.&Q.バンドに加入。85年の"Genie"で優れた歌唱を聴かせる。
そして86年、Atllanticと契約。ソロ・アルバムを録音する。
Curtis Hairston Curtis Hairston (Atlantic 7-81693-1) -1986-
今改めて聴いてもこれは傑作だ。
楽曲、サウンド、そしてカーティスの歌のいずれも優れた水準にある。
しかし、彼にその後はなかった。
(90年に録音があるという情報があるが)
これだけの歌を残した男である。まだまだもう一花咲かしてほしい。
昨今のデジタルの進化=インディーズの活況があればそれは可能だと思う。
それとも、もう世俗は捨てて教会で歌っているのかもしれないが----。
The comments to this entry are closed.
Comments