スケベ心 Marvin Gaye "Let's Get It On"
まっこうからHを歌った"Let's get it on"が、ではない。
ここで紹介するデラックス・エディション(CD2枚組)がスケベなのだ。
このデラックス・エディションは3種類が出ている。
ほかに"What's going on"と"Midnight Love"が出ている。
これらは全てスケベである。
それぞれ、まずオリジナル盤のリマスターが収録され、さらに制作過程のテイクや、収録されなかった未発表曲、関連曲などがぎっしりと収まっている。
そんなものを聴こうとする姿勢がスケベだと思う。
この3枚は、アーティストとしてのマーヴィン・ゲイが産み出した至高の作品である。
完全主義者の彼が作品として問うたもので飽きたらず、その裏側を知りたい----
これは女性のスカートの下を覗いてみたいというのと同じではないか。
そんな憤りを抱きながらも、俺ってスケベなんだよね~。
さて、最初にこれだけは特筆しておかなければならない。
これは犯罪的にヒドイぞ!
実はここでオリジナルとして収録されているもののうち2曲は、全然オリジナルとは違う。
ディレッタントな違いではなく、すぐに気が付くほど歌が異なっているものが、オリジナルと銘打たれて納められている。
これはスケベ云々とは次元の違う犯罪だし、マーヴィン信者にとっては冒涜だ。
いったいどうしてこんなことが、まかり通ってしまったのか。
音楽業界に対し不信にならざるを得ない。
大上段にふりかざしてしまったが、ここからはスケベ話で。
ソロとしてのマーヴィンの歌のなかで、僕が最も好きな一曲"Please Stay (Once You Go Away) "のAlternate Mixに胸をうたれる。
ほんの僅かなサウンドの違いなのだが、最終的なミックスを「幽玄」とすれば、ここにはR&Bとして「ますらおぶり」が感じられる。
中盤左のチャンネルで響くホルン(トロンボーン?管楽器に弱いので不明)がやがて消され、当初は右にあったストリングスが持ってこられる----など興味津々。やはり俺はスケベだ。
そして、このCDの価値を決定的に高めているのが、"Just To Keep You Satisfied"。
この曲はもともとマーヴィンがMotownの他のミュージシャンのために書いた曲だったのだ!
二つのグループに歌わせたものの陽の目を見ず、最後に自分で作品として形にしたというわけ。
その未発表版が共に収録されている。
The Monitersが最初で1968年(リチャード・ストリートが歌っている)。
そして1970年のThe Originals。
このオリジナルズ版が素晴らしい。
Motownにいることで却って実力を過小に評価されてしまったグループだと、しみじみ思う。
ファンタスティック・フォーのように、早い時期にMotownを離れたほうが良かったのかもしれない。
マーヴィンはこのオリジナルズに相当力を注いでおり、そのグループに対する不当な扱いも後にマーヴィンがMotownと対立していく原因になっているかもしれない(おっと、これは僕の妄想)。
それにしても、マーヴィンは素晴らしい。
R&Bにとって歌力は最大の魅力だが、それとは異なる立脚でもう一つの魅力を証明してみせた。
これを僕は偉大だと思う。
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Comments
そうそう、死人に口無し、マニアにとってはこんな有り難いものはないが(もちろん持ってるよ)、俺なら絶対聞かれたくないなあ。けつの穴のしわまで見られる感じだよ〜。身内か権利を持った人が売ったんだろうな。
しかし腐ってもMarvin、さすがである!
Posted by: Hidekichi | April 19, 2006 01:09 AM