コパの夜 Jackie Wilson
しかし、これはピンとこない。エルビスがジャッキーの歌唱を真似たことは確からしいし、そのつながりからジャッキーもエルビスにシンパシーを感じていたというが、ジャッキー・ウィルソンを白く塗ってもエルビスにはならない。エルビスの特に初期の魅力は、音程がちょいとフラット気味になることで、その危うさがロックンロールだと思う。しかしジャッキーの音程は正確無比。
ただ、後年に振り返ったとき、共に無駄な録音をしすぎたという側面はあるだろう。軍隊に入る前のエルビス、あるいはロンリー・ティアドロップスのジャッキーが最高だという教条主義から言えば、ラスベガスのエルビスや今日紹介するコパのジャッキーは資質の無駄使いとするのかもしれない。
だが、エルビスの物真似が殆ど「エルビス・オン・ステージ」時の白いフリフリ衣装を着ているように、エルビスが世界に記憶されたのはむしろラスベガスのパフォーマンスだったと言うこともできる。
同じく、60年代に一流のナイトクラブでコンサートを催しライブ録音まで残した黒人R&B/ソウル・シンガーは、ジャッキーとサム・クックしかいない。それは後に続く黒人に、あるいは白人リスナーに大きな影響を残しただろう。
そして、そんなお題目は別に、このコパのライブはなかなか素晴らしい。
At The Copa Jackie Wilson (Brunswick BRU 81006-2)
※番号はオリジナルではなくCD盤
落ち着いたサパークラブ然の出だしから、ジャッキーは完璧。ジャズあり、ラテン風味あり、しかしその歌の端々にソウルが静かに燃えている。
それが後半になると大き炎をきらめかせる。大ヒット"Night"から、"Doggin' Around"、"To Be Loved"といった代表曲、そして"Lonely Teardrops"で爆発。
しかし、そのままの破綻で終わらせないところがジャッキーらしく、最後は落ち着きのあるまとめ方で、一夜のステージを終える。
ソウルとして聴くのは辛いが、ジャンルを無視すればなかなかのもの。
ただ、それにしても、ジャッキーの振り返ってみれば短かすぎるキャリアのなかで、モータウンと絡んでいたら、カーティス・メイフィールドと絡んでいたら、そうでなくても同じレーベルのユージン・レコードやカール・デイビスともっともっと交わっていたら---と夢はつきない。
やはり僕も教条主義者なんだな。
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