羊頭狗肉 Phil Spector(最終回)
ちょいと引っ張ったが、「フィル・スペクターの」と題されたCDにシュープリームスの関係ない曲が入っていたというのが発端。
ジャケット画像は、本来のシュープリームスのクリスマス・アルバム。フィル・スペクターのと、こっちからと曲を集め(ただし同一曲はダブらないように)配したブート盤というのがCDの正体だった。
だいたいモータウンのベリー・ゴーディJr.の秘蔵っ子だったシュープリームス(ただし、最初ダイアナ・ロスをリードに立てることにベリー・ゴーディは消極的だったと言われているが)が、当時のデトロイトを離れフィル・スペクターのところに行くわけがない、そんなの当たり前じゃないか-----
そんな「常識」が通じたのは1995年までだったというのが今日のお題。
1995年にモータウンがリリースしたシュープリームスの2枚組ベスト「アンソロジー」の収録曲が、まさにそんな常識にとらわれていた音楽ファンを驚愕させた。
ここに収録された一曲"Things Are Change"。これがなんとフィル・スペクター制作。
純粋な未発表曲ではなく、1966年に有色人種の雇用不平等撲滅キャンペーンソングとしてラジオで使われたものだという。レコードとしては発表されなかったので、長らく知られていなかったわけだが、当時ラジオで聴いたリスナーはどう思ったことだろう。
しかし残念ながら、シュープリームスのメンバー達がフィル・スペクターが陣取るコンソールルームの対面で歌ったということではなく、バック・トラックだけを作ってモータウンに送り、後から歌入れしたもの。ただしモータウンのエンジニアも承知したもので、歌にも深いエコーをかけ、典型的なウォール・オブ・サウンドになっている。
※さらにこのコラボレーションには、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンも参加していたという。ここまで来ると音楽のマジックに幻惑されているようにしか思えない-----
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