羊頭狗肉 Phil Spector(つづき)
この気持ちには、ちょっと複雑なところがあって、音楽を真剣に聴き始めた頃、そのネーム・バリューに相当憧れた。当時、名古屋にあった「ビッグOレコード」の店頭で、ロネッツのアルバムが24000円で売られていてびっくりした。レコードがそんな価値を持っているということが信じられず、きっとこれがこの世で一番高いポップスのレコードだろうし、中身も良いに違いないと信じてしまったのだ。
高いレコードはたくさんあるし、しかも価格と内容が比例しないということは今では十分知っているんだけれど。
そのうち英国でリイシューが始まった。ロネッツ、ボビーBソックス&ブルージーンズから、このクリスマス・アルバム(なぜかジャケットが全く変えられていた)まで、それで一通り揃え聴いたのだが、膨らんだ期待に反して拍子抜けしてしまった。
その頃には既にソウル/R&Bに心が傾いていて、フィル・スペクターの「音の壁」の向こう側から聞こえる黒人の声にもどかしさを感じた。
ただ、さすがにこのクリスマス・アルバムは良いと思った。
クリスマス・ミュージックというフォーマットには、オーバー・プロデュースと感じたフィル・スペクターの音がまことによく合う。
このアルバムの特色は、クリスマスのスタンダード曲をフィル・スペクター子飼いのアーティスト達がそれぞれのヒット曲のアレンジで聞かせるというアイデアで、その着想と実現は本当に素晴らしい。やはり僕の好みとは別にフィル・スペクターは天才なんだろう。
このアイデアをそのまま使ったクリスマス・アルバムにベンチャーズのものがある。良い内容なので興味のある方はぜひ聞いていただきたい。(フィル・スペクターが得意ではない僕だがベンチャーズは大好きなのだ)
さて、この話題は明日も続きます。
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