寡作 Bobby McClure
プロデュースがスワンプ・ドッグという面白い取り合わせだが、このLPの制作資本はP-Vine。同社お得意のリイシューや、欧米のリイシューレーベルとの提携ではなくオリジナルというわけ。
いまにして思うと、この頃は日本にソウル・ファンが相当数いたのだろう。20年を経た現在、現代R&B、ヒップホップのファンは激増したが、ソウル・ファンの数あるいはパワーは衰退しているように思う。
きっとみんなソウルを聴き尽くしてしまったんだろうな。僕の場合、不勉強でまだまだ聴くものがたくさん残っているので続いているだけだという気がする(苦笑)。
おっと余談はさておき。
The Cherry LP Bobby McClure (P-Vine PLP-6103)
内容はすこぶる良いと思う。ボビー・マックルーアという人はその実力に比べ寡作で、Checker、Hiの諸作、それ以外の録音も、一部を除きCDで聴くことができるが、「いぶし銀のような職人」というか派手さがない(それがまたいいんだ、という向きもあるだろうが)。しかし、このアルバムでは伸び伸びと勢いよく歌っている。まさに80年代サザン・ソウルの典型。
ブルースも含むが、それもソウル色が強くアルバムの中で浮き上がらない。(僕には80年代サザン・ソウルのエポックとなったZ.Z.ヒル以降のマラコ録音は、どうしてもソウルとブルースがお互い喧嘩しているように聞こえてしまう。単なる狭量か?)
ボビーの持ち味は、シャウトしながらも、底にサム・クックが出てくるところ。彼はシカゴ出身で、若い頃から相当サムに感化されていたらしい(当時としてはそれが当たり前なんだが)。
タイトル曲は、ウェスト・コーストの古いデュオ、マーヴィン&ジョニーの代表曲だが、それもサム・クック調で軽く、しかし熱いものを秘めて歌い流す。
ボビーの第二の充実期のスタートの筈だった。
しかし彼はこの後亡くなってしまう。
その実力に比して寡作と惜しまざるを得ない。
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Comments
お初でございます。
確か昔ボビーなんとかいう人のLPを持っとったなあ…たしかPヴァインの自社制作でサクランボの絵が散らしてあって…と思って探してましたらこちらでジャケ写を拝むことができました!m(_ _)m。
同じく自社制作でブルースのLPも出されたように覚えてますが名前が出てきません。銀色のジャケットだったのは覚えてるんですけども…
ところであの頃はソウルファンが多かったというよりMジックマガジンの影響力が絶大だったように思います。
広告を出稿するレコード店に次の特集記事をリークしてたそうですわ。たとえば「ディープソウル」特集を組めば記事に乗ったレコードがタイミングよく店に並んで、何も知らんファンはうまいこと釣られるようになってました。
したがってある程度売れる数が読めたのでこういうお皿も出せたんだろうと思います。
Posted by: AAVP7 | July 17, 2009 04:01 PM