バンクーバー発 Bobby Taylor
その名をとったバンクーバーズを率いていたのがボビー・テイラー。このグループは白黒混合だったらしいが、そんなカナダのグループをなぜモータウンがリリースしていたのかよくわからない。
ひとつにはデトロイトから湖を渡ればカナダという地の利(?)があったのかもしれない。もうひとつ考えられるのはボビー・テイラーにはコーディネイト力があり、それをモータウンのタイクーンであるベリー・ゴーディが認めたのかもしれない。似たようなケースにハーベイ・フークワがいて、ハーベイがマービン・ゲイをモータウンに取り上げさせたように、このボビー・テイラーはジャクソン5をモータウンに紹介した男として知られている。
僕にとってハーベイ・フークワとボビー・テイラーの共通点がもう一つあって、実はあんまり聴いたことがない。そんな僕に最近リリースされたこのCDはありがたく素晴らしい。
The Motown Anthology Bobby Taylor (Motown 963 851-1)
CD2枚に46曲がぎっしり。The Vancouvers名義の録音、そしてMotownにおけるソロ録音の全てが詰まっているらしい。さらに2枚目のCDの中盤からは未発表曲がてんこ盛り。
正直に言えば、この物量には内心まいっていた。46曲も聴くのはしんどい--いやきっと聴かないだろうなと。
ところが、どっこい。これが非常に楽しめた。デトロイト・マナー=デビッド・ラフィンに代表されるストレートなシャウトを中心にバラエティに富んでいる。
たとえばオーティス・レディングの"Try a Little Tenderness"や、サム&デイブの"Soul Man"を歌っているが、これがなかなか良い。特に前者は難しい歌だと思うが、実に達者に聴かせる。バックも演奏がこれまた興味深い。最初は「おっファンク・ブラザースがメンフィス・サウンドに挑戦か」と思っていたが、これもどうもカナダ録音らしい。それにしてはモータウン臭があって不思議。
カバーにとどまらずディープと言っていい歌唱が楽しめる。未発表の"I Should Have Known It Was You My Love"、"Sometimes I Wonder"のシャウト、あるいはバラードでは代表曲"Does Your Mama Know About Me"、"A Little Too Much"など。
しかし僕が一番気に入ったのは、ポップな"Malinda"という曲。バンクーバーズ名義で、言われてみれば白黒混合らしい感じがあるのだが、これがいい。甘酸っぱい青春歌謡。
ほかにもいろいろな聴きどころがあり、飽きない。これはお宝入り決定。
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