傑作でしょう Kitty And The Haywoods
「US Black Disc Guide」で鈴木さんが70年代コーラス・グループの項で取り上げている(実際は81年作であることは文中にも書かれているが)。
僕はコーラス・グループが好きだから、せめてこの章のものくらいは揃えたいと思ってきたが、このキティのお皿とThe Jaedes(Althena ZLP-6002)だけはこれまで聴くこともできなかった。(注:聴いたことはあるが持っていないのは他にもある。SpiceのLPとかね。)
というわけで、まずはVividさんに感謝。
内容は一口で言って噂に違わぬ名盤。キティの歌の深さは一流で、楽曲がすべて水準以上。確かにこれほどのアルバムというのは、そうそうあるわけじゃない。
だが、このアルバムが売れなかった理由というのはなんとなくわかる。
プロデュースは、女性であればChessでエタ・ジェームスやローラ・リーを手がけたジーン・バージがやっているのだが、もろにシカゴ・ソウルという感じは少ない。まあ僕の耳が悪いのだろうが、やはり80年代初頭のシカゴだったらChi-Soundsの音の印象が強すぎる。もちろん言われてみれば随所に、シカゴ臭いなと思わせる部分は確かにある。(たとえば"Can't Wait For Your Love"、バーナード・リードのベースと、モーリス・ジェニングスのドラムのクールな切れはミシガン湖から吹いてくる冷たい風の音だ。)
キティの歌にも売れなかった理由を見つけられる。ゴスペル直系の歌唱ながら、思わせぶりなメリスマがない。特にバラード表現は細かい「うまさ」を聴かせるもので、ソウル・ファンは唸っても、一般的なキャッチ力に欠ける。
曲も滋味があるものが多い=一般的なキラー曲にはやや弱い。
こうした理由は、すべて後付けで、Capitolによるなにかのプロモーションがあれば、たとえばメルバ・ムーア並には売れていてもおかしくはない。いつもの通り「なにかのボタンのかけ違い」だったと思う。
だが、どんな理由もセールスの失敗の理由にはなるが、僕らソウル・ファンが聴かない理由にはなり得ない。こうしてCDになったのを契機に、日本発で彼女の魅力を世界に再び問うべきだ。
キティについては、このCDの紹介を検索すれば語り尽くされているので簡潔に。
アレサ・フランクリンのアルバム"Sparkle"で素晴らしいバックを聴かせているのが彼女。(このアルバムはカーティス・メイフィールド制作によるシカゴ録音)
ロータリー・コネクションのたくさんあるアルバムの最後の一枚"Hey Love"で歌っている(僕は未聴)。何枚かのシングルがあり、Mercuryで1stアルバムが出ている。鈴木さんはあまり評価していないが、オハイオ・プレイヤーズが制作したもので、今回の2nd以上という人もいるので要チェック=僕も探さなきゃね。
確認されている最後の録音は83年のシングル、つまりこのアルバムから2年後には録音というステージからは降板している。もちろんこれほどのシンガーだから、どこかで歌い続けている筈。なんとももったいない。ゴスペルへと戻りもう神のためにしか歌っていないのかもしれないが---。
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