1976年のPhil's Christmas Album
ご承知の通り、このアルバムが録音されたのは1963年のこと。当時、どのように日本に紹介されたのかについては僕は門外漢なので知らないが、僕がレコードを集めはじめた1980年代前半には、聴きたいと思ってもなかなか機会のないお皿になっていた。
その頃、英国のApple(もちろんビートルズのあのレーベル)がフィル・スペクター関連のアルバムをリイシューしたことがあり、それではじめて聴くことができたのだが、そのときはフィル・スペクター自身(?)がサンタ・クロースの衣装を着ている写真のジャケットだった。
どう考えても、オリジナルの白地に参加メンバーが立体的に並んだ写真ジャケットが最高なのだが、なぜ妙なジャケットに差し替えるのだろう?
この1976年日本盤もイラストによる妙なジャケット。
ただ鏡のなかのイラストのサンタが"Back To Mono"と書かれたバッジを頭巾に着けているのは意識的、挑戦的。つまりこのサンタもフィル・スペクターを示している。
裏ジャケットを仔細に眺めてみると非常に興味深いクレジットがある。まずこのイラストを描いたのはBarbara Brunsdonという女性であること、そしてアート・ディレクションとして数名の名があるのだが、そこにフィル・スペクターも入っている。つまり、この珍妙なジャケットを指示し決定したのはスペクター自身である可能性が高い。さらにこれにも飽きたらずアップル盤の写真に至る---う~ん、この機会に買ったまま放ってある大冊「フィル・スペクター」を読んでみようかな。
解説は大森康雄さんが書いており、76年とは思えないほど的確で細かい部分にまで入り込んだ内容となっている。
こいつは自己反省だが、CDリイシューの時代になり、どんどん音源や資料が発掘され却って昔の人はものを知らなかったような錯覚に陥っている。しかし当たり前だがわかっている人にはわかっていたし、どんなに資料がある今でも胡乱な者にはなにも見えてこない。自戒すべし。
その解説にこのレコードのレアリティについて触れられている箇所がある。
このアルバムはアメリカン・ミュージック・シーンに残る偉大なクリスマス・アルバムである。
このアルバムが、アメリカで廃盤になっていた時、1970年代の初めニューヨークのレコード屋さんでは、25ドルという法外な値段がついていた事さえあるのである。
25ドルかぁ。当時はまだ1ドル360円だったのかな。だとすると9000円相当。
ちなみに物価の変動はあんまり考慮する必要はない。当時はレコードの価格が現在と比べると相対的に高かった。この日本盤も2500円である。今のCDアルバムより高い。
そう考えると、当たり前だが今はレアなお皿も昔はそれなりの安さで買えたんだなと考えたりする、2006年のクリスマスである。
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