東京っていい街ですか 左とん平
言わずと知れた左とん平の「ヘイ・ユウ・ブルース」。
1970年代初頭にラジオ深夜放送の若者文化があった。当時はティーンネイジャーが経済的にも文化的にも現在ほどの力を持っていなかった。当時のマスコミは雑誌にしてもテレビにしても大勢としては若者を向いていなかった。わずかにAMラジオの深夜0時過ぎの時間帯だけが若者に開放されていた。
※ただし、深夜に起きているのは受験生だけではなく夜間就業の大人達も多く完全に独占していたわけではない
その頃、中学生から高校生だった僕は勉強をすると称して夕食をとるなり床に就き、むっくりと起きて深夜ラジオに聴きふけっていた。
ただその頃パーソナリティと称したDJがかける曲は日本のフォークが多く、それにはまったく馴染めなかった。井上陽水、かぐや姫、NSP----といった曲がかかると心底うんざりしたものだ。その満たされない気持ちが後年、ソウルを知ってどっとのめり込む渇きになっていたのだと思う。
例によって前置きが長くなったが、そんな頃よく深夜放送でかかっていたのが、この「ヘイ・ユウ・ブルース」だった。僕の世代だったら誰もが耳にしたはずだ。ただ周りを見渡してもレコードを買ったという友人は皆無だった。日常を離れた深夜放送の常連曲でありながらレコードセールスとしてはヒットしたわけではない---そんな位置にこの曲はあったということは強調しておく。
そしてこの曲が僕は好きだったと書くと大嘘で、嫌な気分になる曲だった。「世の中はすり鉢だ。人生はすりこぎだ」と訴え、「俺をすりこぎにした奴は誰だ」と叫ぶ。子供心に偽悪的で悪趣味だと思った。
しかし後年、この曲を聴きかえして、詞の胡散臭さには閉口するもののサウンドのかっこよさに改めて気が付いた。
曲調はローウェル・フルソンの「トランプ」調----というより当時の関西のバンド、ウェストロード・ブルース・バンドがカバーしたバージョンに近い。
そして左とん平の歌(というより叫びのモノローグ)にはソウルがある。
さらにシングルB面の「東京っていい街だな」に心を奪われた。このストリングス+語りはまさしくスウィート・ソウルだ。
先日、とあるイベントで、渋谷のソウル・バー「アリオリ」でDJをやる機会があった。なにぶん単身赴任の身でこちらにあるレコードやCDは僅かでお恥ずかしい選曲だったが、東京初DJということでテーマとしてこの「東京っていい街だな」を途中で回した。
驚いたのはそこにいたソウル・ファンの殆どがこのB面曲を知っていたこと。さらに、これでチークを踊りはじめる人まで現れた。
というわけで今日も曲貼り。
聴くためにはReal Audio必須。音データはサーバから一ヶ月で削除するのでお早めに。
単に美メロに語りが入るというだけではない。リズムにグルーブがある。それがソウルなんだなぁ----
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Comments
これはちょっとびっくりしました。。。 昔の日本にこんな音があったんですね!なんていうかやはり85年生まれの自分にはどうしてもこの語りはどうしても聴いてて恥ずかしくなるんですがなんというか「ださかっこいい」(失礼)とでも言ったらいいのでしょうか、この語りとこのバックのかっこいい演奏が凄くいい味を出しているように感じます。
Posted by: Airegin | August 17, 2007 12:07 AM
「ヘイ・ユウ・ブルース」にはアイザック・ヘイズの「シャフトのテーマ」を、「東京っていい街だな」にはメイジャー・ハリスの「Love Won't Let Me Wait」をそれぞれ連想させるんですよねえ~。
Posted by: よしき | August 17, 2007 11:11 AM
「ヘイ・ユウ・ブルース」をこの前カラオケで歌い、「なかなか味がある」と友だちにほめてもらいました。
Posted by: tapara | August 18, 2007 11:36 PM
このネタは皆さんくいつきがいい。
ところで後から気が付いたのですが正しい曲名は「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」です。
Aireginさん
左とん平をまずご存じないかも。アクの強いコメディアンです。1932年生まれと資料にありますからこの曲を歌ったときも40代ですね。
A面の「とん平の~」もぜひ聴いてみてください。
なお、語りが恥ずかしくなるのは当時も同じで、基本的にはコメディ路線が入っています。
しかし「ベイビーちゃん」はいいですね。こんど使ってみます。
よしきさん
確かに「東京って~」はフィリーっぽい味わいがありますな。
taparaさん
なんて曲をカラオケで歌っているの!
Posted by: Sugar Pie Guy | August 19, 2007 03:17 AM