2007年最後のレビュー Boyz II Men
全曲カバー集と聞いて、こりゃ駄目だと思った。"Throwback Vol.1"(2004)が既にカバーだったからだ。前作"The Remedy"で復活の兆しを感じたが、これでまた後退かと思った。
ところが、これがなかなかに素晴らしい。
この素晴らしさを評価するのはソウル・ファンの筈だが、彼らを追っているソウル・ファンはどれくらいいるだろう。
2007年の締めくくりとして、この秀作を取り上げる。
Motown Hitsville USA Boyz II Men (Decca UCCU-1161)-2007-
2004年のカバー集の欠点は、ワン・ウェイの"Cutie Pie"のカバーに象徴されていた。ボーイズIIメンの連中が好きな曲を選んだとのことだったが、好きな曲と自分たちに合う曲は同じではない。
それに対し今回のカバー集は、モータウンのヒット集というテーマがあり、さらに彼らにあった曲が選ばれている。
まず冒頭はテンプテーションズの"Just My Imagination"。幾多のシンガー/グループが取り上げた必殺の名曲だが、今回のB2Mのものは最上のものだ。
続くフォー・トップスの"It's The Same Old Song/Reach Out I'll Be There"の2曲をつないだカバーでうなった。B2Mにぴったりとは言えないアップ・テンポだけに出来を危ぶんだのだが、しっかりと歌っている。今回のアルバムが即席ではなく、じっくりと煮詰めてからのレコーディングだった跡がしのばれる。
マービンの"Mercy Mercy Me"、ミラクルズの"The Tracks Of My Tears"あたりは、お手のもの。
パティ・ラベルをゲストにデュエットする"Ain't Nothing Like The Real Thing"、パティも悪い癖を出すことなく(笑)控えめで好感が持てる。
そして目玉が"End Of The Road"のセルフ・カバー。なんとブライアン・マックナイトを加えアカペラで歌うという企画だが、21世紀のこの曲のあり方として、これはこれでありだと思う。
原則として、こうしたカバー集を歌うことはシンガーとして決して前向きではない。次作が飛躍することは難しい。過去の幾多の例がそれを示している。
だが、ソウル・ファンにとって今回のアルバムは捨てがたいものだ。これだけの丁寧な録音を残した彼らを称えたい。
ソウル・ミュージックはまだまだ死なない。来年はどんな素晴らしい音に出会えるだろうか。
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