じんときました 「黒く踊れ!」
「勉強」とは言っても、日本のソウル・ファンにとっての「勉強」と限定されるけれど。
ストリート・ダンサーズ列伝 黒く踊れ! 江守藹 (銀河出版)-2008-
ソウル・ファンの間では黒人のpopな立ち姿を描くイラストレーターとしても知られる著者は筋金入りのDJ/ダンサーでもある。この本は彼の自伝であると同時に日本のソウル・ダンスシーンの歴史書でもある。
ドン勝本さん、ニック・クック&チャッキー、そしてそのグループの一員であるニック岡井さん、こうした人達の生き方を知って、別なアプローチからのソウル・ファンである僕ではあるが感じ入った。
別なアプローチということについて書いておく。
ソウル・ファンにもいろいろあって、好みや年代などでパターンを分けることができるが、70年代を体験している人は次の二軸に分けることができる。
「ディスコなどの踊り場からソウルにはまった人」と「レコードファンとしてソウルにはまった人」。この二つを同時に兼ね備えた人もいるとは思うが、どちらかに振れている人のほうが多いだろう。
僕は断然後者で、少々生まれが遅かったせいもあり、濃厚なソウルがかかる「踊り場」というのには一回しか行ったことがない。確か77年のことで僕は高校生だった。階段状の座り席でアルコールを飲みながら、狭いフロアで踊る「恐ろしげな大人」のダンスを見ていただけだった。
その後、映画「サタデー・ナイト・フィーバー」がヒットし、ディスコブームが到来。サーファー・ディスコなる、今となっては訳のわからないブームもあり、堂々とディスコに入れる年齢になった頃にはディスコでソウル・ミュージックの魅力を知るというのには時期が悪すぎた。
というわけで僕のソウルの入り方は完全にレコード・ファンとしてのもの。
おかげで決定的に欠落している知識があって、先輩から「この曲は当時ディスコでよくかかったんだよ」と意外な曲について教えられ、へぇっと驚くことがよくある。僕のイメージの枠を超えて様々な曲が昔のディスコでは回されていたのだ。
自分のことばかり書いてしまったが、この本は楽しいと同時に読み終わってちょっとした哀切を感じた。
ドン勝本さんもニック岡井さんも亡くなってしまった。来日時のエピソードが書かれているエディ・ケンドリックスも---。
気がつけば僕だって人生の終点はすぐそこにあるかもしれない。
僕は人生は偶然の集結だと考えているので、もしかしてどこかでくしゃみの一つもしていたら、プログレ・ロックファンになっていたかもしれない、いや音楽ファンでなどなかったかもしれない。
ただ今生については何の因果かソウル・ファンになってしまった。このまま行けば間違いなく死ぬまでソウル・ファンだろう。
そんなことを考えてしまったという次第。
※帯の惹句がかっこ良いのでぜひお読みください(画像をクリックすると拡大します)
先回紹介した本「ブラック・ミュージック入門」で、またひっかかるところがあったので、くどいようだが指摘しておく。
その昔、フラミンゴスとかペンギンスとか、おもに1950年代に活躍した複数のドゥ・ワップ・グループが鳥の名前だったため、俗に「バード・グループ」と呼ばれる(P.210)
バード・グループというのは1940年代のコーラス・スタイルの名称でドゥ・ワップとはスタイルが異なる。
バード・グループだったものが流行にのってドゥ・ワップを歌ったというケースがたくさんあることと、ドゥ・ワップのグループ名についてはバード・グループの流れに従って確かに鳥の名前がついたものが多いということで、間違えやすいのは確かだが、入門書でこう書かれては間違いが拡大していくおそれがある。
だいたい、ドゥ・ワップのグループ名を眺めていれば他の流れもあることに気がつくはず。スパニエルズやシェパーズらがいたから「ドッグ・グループ」とは呼ばないでしょ(笑)
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Comments
はじめまして!だと思います。
江守さん著の話題を拝見し、つい記して
しまいました。
ワタシも、35年程前に江守さんやニックさ
んに憧れてディスコの世界~ソウルの世界
に魅せられた1人です。
よく貴ブログを拝見させていただいており
ます。
ワタシも“黒く踊れ!”を拝読し江守さん
の驚愕すべき記憶力と観察力に驚いた1人
です。
音楽としてのソウルや黒人音楽に関する
書物等は数多く出ていますが“踊る”側面
から記した書はほとんどなかったので今回
の発刊は記念すべき事例になったと思って
おります。
また稚拙ながらも小生もブログをやってお
りますので、お暇な時にでも覘いてやって
ください。
時節柄、今年も宜しくお願いいたします。
Posted by: モンスターゼロ | January 05, 2009 03:43 PM
モンスターゼロさん、はじめまして。
さっそく貴ブログを拝見させていただきました。
エモーションのある、ソウルファンにはたまらない内容ですね。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
Posted by: Sugar Pie Guy | January 06, 2009 12:59 AM