スタイル変幻 西田佐知子
僕は昭和30年代後半生まれにもかかわらず、同時代の歌謡曲にまったく無関心だった。
そもそも育った家庭がクラシック音楽一辺倒で、幼少の頃は歌謡曲など音楽ではないと思っていた。まったくガキの頃からバカだったというわけで恥ずかしい。
中学にあがると洋楽に心惹かれ、高校を出る頃にソウルと出会い、そっちを聴くのに忙しく、歌謡曲に興味が出てきたのは30代を超えてからと、晩稲(オクテ)だった。
一番ショックを受けたのが10年前に出た作曲家筒美京平のBOX(二箱)。リマスターされた音質で聴く歌謡曲はキッチュな魅力に溢れていた。
その筒美京平BOXのなかでも最も素晴らしいと感じたのが西田佐知子の「くれないホテル」。
このBOXは実家に置いたままで、突然「くれないホテル」が聴きたくなり、どうせならと西田佐知子のCDを買ったというわけ。
Best & Best 西田佐知子 (ユニバーサルミュージック DCT-773)
例によって素っ気ないCDで、収録曲のデータは作詞と作曲のクレジットがあるだけ。せめて何年の録音なのかくらい書いておけばいいじゃないか。まったく日本の歌謡曲は送り手の愛情が少ない。
それはさておき、聴いて驚いたのは西田佐知子というシンガーのスタイルの多様性。ムード歌謡あり、エキゾティックなものありとバラエティに富んでいる。
代表曲「アカシアの雨がやむとき」で「雨にうたれてこのまま死んでしまいた ~ 冷たくなった私を見つけてあの人は涙を流してくれるでしょうか」と恨み節を語ったと思えば、「コーヒールンバ」では「昔アラブの偉いお坊さんが」と言い出す。
突如"Disco Lady"を歌ったジョニー・テイラーなど、これに比べればスケールが小さい。まったく歌謡曲はおもしろい。
せっかくなので二曲をお聴きいただこう。
「コーヒー・ルンバ」はイスマエル・リベーラが歌うコルティーホ・イ・ス・コンボの演奏でよく聴いたが、西田佐知子版について今の今まで歌い出しは「昔アラブの偉い王様が」だと思いこんでいた。本当は「昔アラブの偉いお坊さんが」。う~む、何十年もそう信じてきたのに。それにしてもイスラームのイマームをお坊さんと呼ぶのだろうか。通常は導師と訳すが。
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Comments
あれ~私も「アラブの偉い王様」だと思っておりました。
なんとなく口をついて出たこの歌のことが気になって、まさに「昔アラブの偉い王様が」で検索したらこのページに辿り着きました。~面白いものですね。
ちなみに私も昭和30年代後半生まれ、自分の時代はフィンガーファイブあたりから松田聖子全盛時代、ほれ込んで聴いたのはオフコースでした。
Posted by: ch.F | May 13, 2009 05:52 AM