Ben E. king "I Had A Love"

　ベン・E・キングの傑作。これを聴かなきゃもったいなさすぎる。

　先回、ベン・Eは不運だ、などと不遜なことを書いた。「スタンド・バイ・ミー」を歌うことができたというのは、とてつもない幸運なのは間違いないが、おかげでこんな傑作がかすんでしまう。

I Had A Love　Ben E. King　(Atlantic SD 18169)-1976-

　フィリー録音。
　ごく近い位置にあるソロ・シンガーのアルバムとして、メイジャー・ハリスの"My Way"と比べてみたい。

　メイジャー・ハリスのそのお皿は、真の傑作。ポール・アンカ作のシナトラが歌ったタイトル曲さえ除けば完璧なアルバム。
　しかし、歌の巧さとスケールではベン・Eのほうが上。楽曲のまとまりで一歩譲っても、そこで盛り返しイーブンだな。

　知っている人は知っている、このアルバムの聴きどころ。

　まずプロデュース。

　全9曲のうち、Bert DeCoteaux & Tony Silvesterが4曲、ノーマン・ハリスが4曲、さらにロニー・ベイカー、アール・ヤング、ノーマン・ハリスの三人によるものが1曲。
　フィリー・ソウル好きには、このデータだけでひれふすしかない。

　お次はコンポーザー。

　タイトル曲はアシュフォード&シンプソン。"I Betcha Didnt Know That"はサム・ディーズとフレデリック・ナイトの共作。さらにサム・ディーズ作品がほかに3曲。

　これで聴きたくならないようならソウル・ファンじゃない。

　そしてベン・Eの歌がいいんだ。軽やかでいて、バラードでは一緒に泣いてくれる。

　どれをいこうか悩む秀作揃いだが、典型的なフィリー・ダンサーを聴いていただく。"We Got Love"

　この曲は数年前に出た、素晴らしいコンピCD"Spirit Of Philadelphia 2"にも取り上げられていた。

　あとAtlanticのソロ秀作を集めたCD"Searchin' For The Dreamland"にタイトルの"I Had A Love"が収録されているが3分39秒のシングルテイク。このアルバムでは5分24秒も聴ける。

　そうそう、これも涙ちょちょぎれのコンピCD"You Better Believe It"に"Smooth Sailing"がピックアップされていたっけ。

　と、現代のリイシューCDでの扱いを見ても、この76年のアルバムがどれほど充実しているか、おわかり頂けるだろう。

　大好きな皿なので、今日はちょっと力入りすぎ。眉に唾して、少し割り引いて読んだほうがいいかな～（笑）