Cheatin' In The Next Room / Jesse James
この曲が本来は哀切な内容だということは昨日書いた。
だがそれがなぜ、こんな軽快に歌われるのか。そのルーツはやはりブルースに近いのかもしれない。本当のやりきれなさ、哀しさは時として裏返る表現になる、それが人間の性であり、そこを衝くからブルースは心に刃を刺すのだ。
"Cheatin' In The Next Room"は80年代、90年代を生き抜くソウルのスタンダードになったが、この曲のカバーの多くが、あるグルーブで歌われたきたこと、あるいはそのグルーブで歌うのにまことに適切な曲がこれだった、ということがあると思う。
そのグルーブとは「タイロン・デイビス調」。
いまだにサザン・ソウルでは繰り返される不滅のグルーブだが、このタイロン調が定着したのが、まさにZ.Z.ヒルやデニス・ラサールがマラコ入りした80年代初頭だった。
デニス・ラサールの"Lady in the street"を聴いていただくことで説得力が増すと思う。
おもしろいのはこのタイロン調の流行の場が南部であるのに対し、一大産地がシカゴであること。オーティス・クレイから、ウィリー・クレイトンに至るまでこの例は多く、さすがにタイロン・デイビスのお家芸であると感心する。もっともさすがに最近は南部の現地生産が盛んだが。
というわけで、今日はジェシ・ジェイムスのライブによるカバーをお聞きいただこう。
Cheatin' In The Next Room / Jesse James
↑9分ほどの長尺なので読み込みに少々時間がかかるかも
これが収録されているのは次のアルバム(CDにもなっているのでCD番号を記載する)。
I Can Do Bad By Myself Jesse James (Gunsmoke SMO-001)
ジェシ・ジェイムスも初期にシカゴで録音しているし---というのはちと苦しいな。このGunsmoke盤はおそらくウェスト・コースト録音。
それにしても素晴らしい雰囲気のライブ。
この客席の盛り上がりがチトリン・サーキットのそれなのだろう。世俗のゴスペル教会の高揚で、こんな場に居合わせたら座りションベンちびっちゃうね、僕は。
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Comments
>そのグルーブとは「タイロン・デイビス調」。
タイロン・デイビスは私の中ではNo.2ですからこのグルーブにはどっぷりです〜。
>もっともさすがに最近は南部の現地生産が盛んだが。
南部の現地生産かは知りませんが
最近のサザンソウルのヒット曲では以下がそんな雰囲気かと
Forbidden Love Affair / Vick Allen
I Ran A Good Man Away / Lacee
Man Enough/Karen Wolfe
http://blog.livedoor.jp/adhista/
で聞けます。
Posted by: ad | August 22, 2009 12:31 PM