【USBDG 004】 James Brown
※毎週末はUSBDG紹介です。USBDGについてはこちらをご参照ください
ジェイムス・ブラウン。あまりにも偉大な存在。JBなかりせば世界のポピュラー音楽の今の姿はかなり異なったものになっていた筈。
その出発点を記録した1stアルバム。心して聴くべし。
Please,Please,Please James Brown (KING 610)-1959-
しかしそのワン・アンド・オンリーのJBも虚無から誕生したわけではない。1956年から59年のシングルの中から編まれたこのアルバムを聴くと、JBがどこから来たかがわかる。
まずはジャンプ・ブルースの影響。同じキング・レコードの大先輩ロイ・ブラウンの唱法を聴くことができる。
ロイ・ブラウンやワイノニー・ハリスが大先輩とすれば、ちょい兄貴となるリトル・リチャード直伝のノベルティ・タッチのシャウトもここでは聴ける。
さらにくだけた往年のルイ・ジョーダンのような軽妙さも見える。時代ゆえにアレンジにはバード・グループからドゥーワップに近いコーラスをつけたものもある(ああ、しかしバックに聴こえるボビー・バードのなんと素晴らしい声!)。
このアルバムを聴けば、50年代末期までのリズム&ブルースのごった煮を煮詰めたものがJBだったのだとわかる。
もしJBのキャリアがこの一枚で終わっていたとしても、R&B史にエターナルな輝きを放っていただろう。
だがしかし。このアルバムにはそんな「評論」では語れない驚くべき曲が含まれている。
アルバム・タイトル曲の"Please,Please,Please"がそれだ。
Please,Please,Pleaseと続くリフレインのこの響きはなんなのだろう。
スタイルとしてはゴスペルのコール&レスポンスの部分拡大だと「評論」できるかもしれない。
だが「戻ってきて」という哀願は、異性を呼び戻す声ではなく、冥界から生者を誘う呪詛のようだ。
今生に彷徨える魂魄(ソウル)よここに集へ。共に冥府に至らん。
キングのレーベル・オーナー、シド・ネイサンが難色を示したというこの曲はJBのデビュー曲でもある。JBはこの時点でどこにもないスタイルを形成している。なんたることだ。
JBがどこから来たのかわかる、なんて大嘘だ。
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