Willie Clayton ”Forever”
ウィリー・クレイトンの"Forever"は日本ではP-VineからLP、CDで二回出された。その両方が僕にとって重要皿。
Forever Willie Clayton
LP番号はPJ-126、CDはPCD-1251。
LP、CDとも1988年のほぼ同時期(わずかにLPが早い)に出ている。
以下、私事。
僕はまずLPを買ったのだが、これは微妙な時期だった。
87年に結婚したが、当初新居にはレコードプレイヤーもCDプレイヤーもなかった。
叔父が結婚祝いにオーディオを買ってくれるというので自分で揃えなかったのだが、結局叔父から頂戴したのは結婚して半年ほど過ぎてから。
なにが言いたいかというと、音楽がそんなに重要じゃなかった、レコードが聴けなくても困らなかったということ。
オーディオが届いてからも、学生時代にそこそこ買ったのだから趣味としてそれをずっと聴きなおしていればいいやと思っていた。
おりからR&Bシーンを席巻しつつあったニュージャックに全く興味を抱けなかったということもあった。
それでも何かの気持ちは残っていたのだろうか。
なぜか覚えていないのだが、このウィリー・クレイトンのLPを買ったのだ。
はじめてこれをターンテーブルに載せたときの感動は今でも色あせない。
特に"Rock And Hold Your Baby"にやられた。
リアルタイムでこんなソウルを歌っている人がいるのか!
そしてソウル・ミュージックのなんと素晴らしいこと。これを聴かなきゃ人生もったいない。
そこから第二のレコード/CD収集熱がぶり返した。モダンソウルと呼ばれるものも聴いたし、敬遠していたニュージャックもだんだんと魅力がわかってきた。
ウィリー・クレイトンのこのアルバムを耳にしなかったら、もしかしたら僕はソウルファンをやめていたかもしれない。その点でこれは僕にとって重要作だし、以来ウィリーをずっと聴き続けてきた。
つまらない私事は切り上げ、80年代のウィリーの活動をわかる範囲で書いておこう。下記がシングルのリストになる。
1-「Where Has Love Gone / Love Ya One More Time」(83-) Kirstee CH-1005
2-「Tell Me / Love You One More Time」(84-) Complete CP-120
3-「What A Way To Put It / So Tied Up」(84-) Complete CP-124
4-「Running In & Out My Life / Love Pain」(85-) Kirstee RR-22
5-「Happy / Happy(inst.)」(85-) Big Citye B.C.-2424
6-「Happy Time / Happy Time(inst.)」(85-) Nuance NU-753
7-「Turn You On / Turn You On(inst.)」(85-) Kirstee 5151-12
8-「Weak For You / Where Love Has Gone」(85-) Kirstee KR-1007
9-「Show And Tell / Weak For You」(85-) Kirstee KR-1007-45
10-「Show And Tell / Weak For You」(85-) Kirstee KR-1007-12
11-「Your Sweetness / Your Sweetness(inst.)」(87-) Kirstee KR-1009
12-「Rocking Chair / Stay」(87-) Warlock CH-1005
13-「We're Gettin Careless With Our Love / Dancin'」(87-) Kirstee CH-1011
14-「Can I Changed My Mind / Stay」(87-) Kirstee CH-1005
Pawn以降、上記の1以前にSky Hero、Good Luckからシングルを出しているとのことだが曲名、レコード番号共不明、もちろん未聴。
ソウル・ミュージック不毛の時期にこれだけのシングルを残したのはウィリーの実力ならではで、これが英国のリイシューレーベルTimelessの目にとまり、編まれたアルバムが"Forever"。
このアルバムには8曲が収録されている。
A-1.Your Sweetness
-2.Rock And Hold You Baby
-3.Special Lady
-4.Stone Good Lover
B-1.Can I Changed My Mind
-2.Make Me Yours Forever
-3.Rocking Chair
-4.One Night Stand
先に掲げたシングルリストからの収録は僅かに3曲、残る5曲は新録で、名実共にウィリーの1stアルバムに位置づけられる。
※ここに収録されなかったものはTimelessの次のアルバム(後年About TimeよりCD化)で聴くことができる
80年代中盤以降のインディーズ、いわゆるモダンソウルのすかすかのチープな音だが、ウィリーの歌はフレッシュに躍動する。歌のテクニックは驚嘆すべきレベルであり、次世代ソウルを担う逸材として話題となったのは当然だった。
グウェン・マックレー、アル・グリーンらのカバーが多いが、ぴたりとはまっているのはタイロン・デイビスのカバー。オリジナルの"Stone Good Lover"もタイロン調。ただタイロンほど悠然とはしておらず、もっとフレッシュ。これがウィリーの一つのスタイルとなる。
「ミュージックマガジン」誌のクロスレビューに取り上げられ各人が高得点をつけたなか、中村とうよう氏だけが辛口の評価をつけた。
曰く、ソウルのスタイルだけの借り物、オーティスにはもっと深いものがあった、という論旨だが、今にして思えばかの中村氏がオーティスを引き合いに出すだけの話題性と実力があったということ。
LPに続くCDではさらに3曲が追加された。
Tell Me
What A Way To Put It
So Tied Up
84年のCmplete音源で、ジェネラル・クルックのカバーとなる"Tell Me"、サム・ディーズの"So Tied Up"の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。
前述したフレッシュ風味のタイロン調のミディアムと、この情感をこめたバラードの二本柱をウィリーは持っている。彼がここから膨大な量の録音を残し、それが一定のセールスを獲得できた強みだと思う。
So Tied Up / Willie Clayton
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Comments
"Tell Me", "So Tied Up"
この2曲を超えているかどうかがWillie作品を判断するメルクマールとなる、とまで思っています。
ここまで歌っちゃう作品というのは今のところない。
今度の新作はどうですか?
Posted by: friso | January 06, 2010 09:10 AM
friscoさん
それは判断指標が高すぎです。
その二曲を超えるということは、新たなソウル・クラシックが生まれるということですから。
ただし、それに肉薄する出来のものはいくつもあります。
特に最新作では、かってウィリー自身が歌ったもう一つのジェネラル・クルック曲"Best Years Of My Life"をリメイクしています。
素晴らしい仕上がりです。
Posted by: Sugar Pie Guy | January 06, 2010 11:45 PM