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Willie Clayton "Simply Beautiful"

Willieclayton09 Aceからの2枚目。

 このアルバムの特徴は、まずブルースが姿を消したこと。合わないとスタッフが判断したのか本人が嫌がったのか良い兆候。ただしこの後のアルバムで復活することになるのだが。
 また、ついに既出曲の再収録がなくなった。新作として安心して楽しめる。やれやれ。
 さらに"Tell Me"のセルフリメイクという楽しいおまけがついて大満足。

Simply Beautiful Willie Clayton (ACE 2054)-1995-

01 Lose What You Got
02 Dancing With My Baby
03 Love Stealing Ain't Worth Stealing
04 Crazy For You
05 Ain't No Way
06 Oops, There It Is
07 Tell Me
08 So Glad You're Mine
09 Simply Beautiful
10 Once Upon A Time
11 Stay
12 Do To You

 1、毎度おなじみのタイロン調のストンプでアルバムスタート。ホルン(シンセかもしれない)のソロが入っているのが楽しいし終盤の女性コーラスとの掛け合いもよくマンネリを感じさせない。

 2、完全なサム・クック・スタイル。サムの歌唱法をなぞっても抜群にうまい。

 3は素晴らしいミディアム。女性コーラスとの掛け合いも良く、90年代サザン・ソウルの最良の部類だと思う。バックのサウンドのチープさも気にならない。

 4はまたタイロン調。イントロの音がしょぼいのと、ここでは他の膨大な「ウィリーが歌うタイロン調」曲との差別化ができておらずマンネリ感あり。

 5、真っ向から歌ったバラードだが、楽曲がいまひとつ、バックのサウンドも単調なのが辛い。

 6の作曲はレオ・グラハム。カバーなのかな。例によってタイロン調。例によってOne Of 「「ウィリーが歌うタイロン調」。

 7、このアルバムのハイライト。ジェネラル・クルックの"Tell Me"の再カバー。ウィリーのクルックに対するこだわりが伺える。
 気になる出来だが---
 リメイクが良くなった例というのはソウル界ではデルズの"Stay In My Corner"と、アイズレー・ブラザースの"That Lady"あたりしかない(そのデルズでさえ"Oh What A Night"で惨敗を喫している)。死屍累々の誤った戦略のなかでウィリーのこれは相当に頑張っている。テンポをちょっとあげてアレンジを敢えてあっさりとさせ違う魅力を引き出している。

 ※クルック作のセルフリメイクについては目下の新譜"Love, Romance & Respect"(2009)に"Best Years Of My Life"という最終回答を出している。その話はいずれ近いうちに。

 8、ややレゲエ調の変わった曲。ただレゲエが嫌いな僕もいけます。曲に魅力が欠けるもののウィリーの歌いかたは新鮮で最後まで楽しめる。

 9、アルグリーンのカバー。アコースティックギター音ではじまり、何か新味があるのかと期待させるが単調なまま推移する。ウィリーの歌は相当に熱いだけに残念。
 これがアルバムタイトル曲というのは戦略的に失策だと思う。やはりまずタイトル曲を聴いてみようという人は多い。アル・グリーンと比べられるし損だ---って余計なお節介ですか。

 10、タイトルの"Once Upon A Time"が、まさに80年代中期の彼のスタイルを思い起こさせる明るい曲。

 11、イントロが歌謡曲、演歌風。歌にはいると、80年代末期のブラコン風で女性との語りも入りり興味はかきたてられるが、どこかちぐはぐでもったいない。

 12は典型的なモダンソウル・サウンドのバラード。悪く言えばチープさが耳障り、良く言えばこれぞ90年代の生きたソウル。そこからはお好み次第。

 僕は好きなアルバムなのだが、これぞという曲がないのも確か。
 だがいずれの曲でもウィリーの歌のうまさは際だつ。
 それは「嫌になるくらいうまい」。
 ウィリーに萌えないというソウルファンの気持ちはわかる。すべてを軽々と歌いこなすためにアルバムを通して聴いていると歌に鈍感になってくる。
 でもそれはあまりに贅沢な欲。
 中古盤が安く出ていたらぜひ離すことなくレジへ。後悔はさせません。

 このところ音貼りをさぼっていたので今日はリメイク版の"Tell Me"を貼っておきます。お楽しみあれ。

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Comments

引き続きのWillie Clayton特集、楽しませてもらってます。ところで、リメイク版"Tell Me"を聴きましたが、僕が先日購入したCD"No Getting Over Me"の6曲目にも収録されていました...

Posted by: Beau | January 11, 2010 09:52 PM

> Beauさん

既出曲の重複---80~90年代のウィリーを聴き続ける上での試練です。

Posted by: Sugar Pie Guy | January 11, 2010 10:24 PM

僕は中古屋で安く購入したので、全く問題なしですよ。逆に今後は、重複曲を探すのが楽しみになったりして(笑)

Posted by: Beau | January 11, 2010 11:13 PM

Beauさん
明日にその"No Getting Over Me"を取り上げますが、なんと"Tell Me"はイントロ部分が切ってあります。
なんでそんなことするかな~後は明日ね。

Posted by: Sugar Pie Guy | January 12, 2010 02:52 PM

明日の"No Getting Over Me"のレビュー、楽しみにしてます。
Sugar Pie Guyさんのお気に入りのサザンソウル・アーティストを新旧含め数名上げるとしたら、誰ですか?その内の一人はWillie Claytonかとは思いますが(笑)。また、そのアーティストのお気に入り盤があれば、教えてもらえると嬉しいです。今後の参考にさせてもらえればと思います!

Posted by: Beau | January 13, 2010 02:22 AM

Beauさん

サザンソウルそのものに疎いんです。
だから、ありきたりなところですね。
ジェイムス・カー、スペンサー・ウィギンス、ドン・ブライアント、O.V.ライト---
で、ウィリー・クレイトンはサザンソウルとしては聴いていません。
(※現代のアンソニー・ハミルトンやビッグ・ジムをサザンソウルとすれば入るんでしょうが)
いっぽう同じくシカゴ出身のオーティス・クレイはサザンソウルに入れたくなるから適当な決めなんですけどね。

Posted by: Sugar Pie Guy | January 13, 2010 07:54 AM

ジェイムス・カー、スペンサー・ウィギンス、ドン・ブライアント、O.V.ライト…。彼らの名前は聞いたことはありますが、CDを買ったことはないですねー(苦笑)、勉強します…。
僕は、US Black Disc Guideの「80年代のサザン・ソウル」のレビューを参考にしていますが、その中で、Sugar Pie Guyさん的に好きなCDとかありますか?

Posted by: Beau | January 13, 2010 07:05 PM

Beauさん

今USBDGを見てびっくり。726~772って「80年代のサザンソウル」って章名なんですね。
でも、正直、ここで選ばれているシンガーの半分くらいはサザンソウルって気持ちで聴いていないですね~。
好き度で言えばプリンス・ミッチェル(761)、サム・ディーズ(769)。
歌いぶりではジョニー・テイラー(745)、デニス・ラサール(750)、トミー・テイト(753)、ランディ・ブラウン(757)あたりですかね。
ボビー・ブランド(747)は別格。ただし彼のベストはこれ以前のDUKE時代でしょう。

Posted by: Sugar Pie Guy | January 14, 2010 01:05 AM

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