Black America sings Lennon & McCartney
今回は英国Aceの選曲によるソウル・シンガーによるビートルズカバー集。
Black America sings Lennon & McCartney various (Ace CDCHD 1300)
タイトルにビートルズの文字を使わないのが洒落ているが、リンゴはもちろん(?)ジョージの曲も入っていないよという意味でもあり、ちょっと寂しい気もする。
前回のモータウン。一枚通して聴くとなんだか良くなってきたが、一曲毎には辛いものもあった。どうしてもアルバムの穴埋め曲的なものが多かったからだろう。
その点、こちらは素晴らしい。一曲目のチャービー・チェッカーからノックアウトされたせいもあるが、とにかく良いな~とため息をつくような歌ばかりが収められている。
1. Back in the USSR - Chubby Checker
フィリーのツイスト男チャービー・チェッカーのご機嫌なロックンロールでスタート。この曲のオリジナルのオリジナルと言うべき「サーフィンUSA」はチャック・ベリーだからか、ぴたりとはまる。熱気あふれるバックに叫びまくるチャービー。
2. We Can Work It Out - Maxine Brown
マキシン・ブラウンですからね。悪かろうはずがない。声を張り上げなくてもソウルを表現できる稀有なシンガーだけあって原曲よりぐっとテンポを落とし、しっかりと聴かせる。
3. Everybody's Got Something to Hide Except Me and My Monkey - Fats Domino
ニュー・オーリンズのサウンドになぜかはまる。ファッツ・ドミノの余裕たっぷりの歌に抱かれるのみ。
4. Ticket to Ride - Wee Willie Walker
アレンジを変え、これぞサザン・ダンサーというナンバーに。ウィリー・ウォーカーのリズムの乗りが抜群。
5. Good Day Sunshine - Roy Redmond
調べたらこれ日本盤シングルも出ていた。原曲の爽やかさを取り払いヘビーなディープ・ソウルに変身。
6. Please Please Me - Mary Wells
「マイガイ」のフレーズをちょっと入れ、コケティッシュに歌う。
7. Eleanor Rigby - Gene Chandler
この曲が収録されたアルバムは持っているが、いつも飛ばしていた気がする(笑)。改めて聴くとさすがジーン・チャンドラー。軽やかな身のこなしにダンディズムを感じる。
8. And I Love Her - The Vibrations
いきなりファルセットで歌いだすスウィート・ソウル。素っ頓狂なアレンジとのミスマッチが妖しい。
9. Come Together - Chairmen Of The Board
チェアメン得意のアレンジで、例によってくどく歌うのが、彼らにぴったり。
10. Blackbird - Billy Preston
原曲のフォーキーな感じから、ファンキーゴスペル調に変身。
11. Paperback Writer - R.B. Greaves
ロッキンR&B。この思い切りがなかなか。
12. Rocky Racoon - The Moments
こんな曲をカバーするとは。モーメンツだがバリトンで歌う--といってビリー・ブラウンの声にも聞こえない。アル・グッドマンのリードなのかな。
13. Drive My Car - Black Heat
ファンキー・ソウルに仕立て愉快痛快。
14. Lady Madonna - Junior Parker
原曲のボードヴィル調のアレンジではなく、ぐっとヘビィに聴かせる。
15. Help - David Porter
怒涛のように歌いきることでソウル・ダンサーに変身。
16. Yesterday - Linda Jones
ソウルで歌ってはいけない曲だが、リンダ・ジョーンズの超くどさで、原曲の通俗さがお下劣になっている。ここまでやればいいでしょう。
17. Day Tripper - Otis Redding
ああオーティスね。---えっアレンジが違う。未発表テイクを収録。さすがAce、やることが憎い。
18. Why Don't We Do It in the Road - Lowell Fulson
ここまでフルソン節にしたらカバーじゃなくオリジナルって言っちゃえばよかったのに。白人がさんざんやった手口をやりかえしてもいいんじゃない(笑)
19. I Saw Her Standing There - Little Richard
この曲をリトル・リチャードに与えてくれたレノン=マッカートニーに感謝します。素晴らしいロックンロール。
20. Don't Let Me Down - Donald Height
軽く歌っているようでディープなものをちらつかせる、このN.Y.シンガーのふところの深さに涙。このCDの白眉の一曲。
21. Get Back - The Main Ingredient
スウィート・ソウル・ダンサーに。メロディを微妙に変えているのが嬉しい。
22. The Long and Winding Road - The New Birth
オリジナルは通俗の極みで、ポールにもどうしようもならなかった。いっそフィル・スペクターの大仰なアレンジが救いだったと思う(ポールは怒ったそうだが)。しかし、レズリー・ウィルソンくらいにくどく歌えばこんなに良くなるという実証。
23. I Want to Hold Your Hand - Al Green
完全にソウルにアレンジを変えている。ガッタ、ガッタと叫ぶアル・グリーン。
24. Let It Be - Aretha Franklin
ゴスペルとソウルをまたいだ歌ならば真打はアレサ。歌の表現力はもはや別次元なり。
以上、素晴らしいソウルの連打。ビートルズという枠を意識せず、単にソウルのコンピレーションとしても傑作に類する。未聴のソウル・ファンはぜひ!
なお、ブックレットは毎度ながら英国魂の入った素晴らしいものだが、曲の解説がこのCDの収録順ではなくオリジナルのビートルズの発表順になっている。アルバム収録曲はアルバムでまとめるという凝り様。ビートルズ・ファンには楽しいだろう。
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