Motown meets the Beatles
からすカァーと鳴いて2012年でございます。
昨年はこのブログの更新をまったくさぼっておりました。言い訳は---よしましょう。
年が改まったのを機会に、心機一転「ソウル一日一枚」の名まではいきませんが、定期的になにかを取り上げていく所存です。
さあ、その新年なにを聴こうか。
そうだ、購入はしたものの、なんとなく億劫で聴いていないものを聴き初めしよう。
さっそく未開封のCDを一枚取り出し、シュリンクを破ってケースを開く。ゆえに「開けましておめでとう」という次第。
Motown meets the Beatles various (spectrum 530 410-2)
小学生の頃、テレビの洋画劇場を観るのが常だった。1970年代はじめのころ。その当時にテレビ放映されるということはもっと古い映画ということになり、おかげでいまだに好きな映画は50~60年代のものが多い。というより80年代以降の映画はそもそも観ていない。
それで映画音楽が好きになった。「シャレード」とか「白い恋人たち」といった美しいメロディ、あるいは「荒野の七人」、「大脱走」といった勇壮なものまで。
当時、映画音楽というのはリスニングの大きな柱で一般によく聴かれていた。
そんなころテレビで映画音楽特集の番組があり、僕はカセットデッキで生録音(ラインを通さないライブ録音)した。
そのなかでビートルズの「ヤア、ヤア、ヤア」や「四人はアイドル」が放映された。
ビートルズは先にレット・イット・ビーをラジオで聴いていて、美しいリフレインだなと感じていた。
しかし、この二つの映画の主題歌は、すなわちロックンロールであり、ご多分に漏れずローティーンの僕の心を鷲づかみにした。
そこに追い打ちをかけたのがビートルズのベスト集である、赤盤、青盤の発売。
まず赤盤を買い、次に後期のものはオリジナルLPで揃えていった。前期は結局、LPは数枚買いたしただけ。というわけで彼らの曲については前期はだいたい、後期はかなり知っている。
ビートルズの魅力については人それぞれ受け取りかたが違うと思うが、僕はとにかく下品で無鉄砲なところに惹かれた。
ジョン・レノンの声というのは良く言えばセクシャル、悪く言えば下品だと感じる。その下品さは彼が憧れた音楽、エルビス・プレスリーをバイパスとする本道=ブルース、R&B、ソウルに起因すると思う。
無鉄砲と感じたのはたとえば「アイ・フィール・ファイン」の出だしでギターがハウリングを起こし本来の音が聞こえないのに、おもしろいからとそのままレコード化してしまうようなところ。あの発想はすごい。それをよしとしたジョージ・マーティンも偉いと思う。
さて、僕はその後、数年の紆余曲折を経てR&B、ソウルのファンとなったのだが、どうしても違和感があるのがビートルズの曲を黒人が歌うもの。
なぜか当の黒人がビートルズを歌うと、源泉である筈の下品さ、無鉄砲さが影をひそめてしまう傾向がある。
なにか妙にかしこまったように感じられてしまい、どうにもおもしろくない。
もちろん例外はある。一つは圧倒的な歌唱で楽曲をねじふせるタイプ。オーティス・レディングの歌う「デイ・トリッパー」、ウィルソン・ピケットの「ヘイ・ジュード」など。
あるいはメロディと歌詞を残し楽曲を大幅にアレンジしたもの。ファースト・クラスの「アンド・アイ・ラブ・ハー」。レイクサイドの「抱きしめたい」など。
しかし、これ以外の、直裁に言えばLPの穴埋めのように録音されたビートルズ・カバーはどうもいけない。
以上、モータウンのビートルズ・カバー集にはどうも及び腰だったという言い訳。
ところが、正月からこのCDを通して聴くと、なかなかいいんですね。
長い前置きを書き散らした後で前言撤回とは情けないが、どうもこれには僕が歳をくってビートルズにあまり拘泥を感じなくなったということもあるかもしれない。
ともあれ全曲紹介。
1. Hard Day's Night - The Supremes
おそらく彼女たちのアルバムの一曲だったら飛ばしていると思う。アレンジそのまま綺麗になぞっただけ。ただそれでもちゃんと芸になっている。その「うまさ」をどう感じるかだと思う。
2. Eleanor Rigby - The Four Tops
凝ったコーラス・アレンジが施され、リーバイの歌唱に圧倒される。さすが。
ただこれも彼らのLPのなかで、彼ら自身の他の「ソウル」ナンバーに立ち向かえるだろうか。
3. We Can Work It Out - Stevie Wonder
これはいいですね。スティービー・ワンダーの溌剌とした歌いぶりがビートルズのフレッシュさとあっているように感じる。やはりスティービーのリズム感は大したものだ。
4. Hey Jude - The Temptations
脳天気なアレンジで腐るが、それでもエディ・ケンドリックやメルビン・フランクリン、そしてポール・ウィリアムスの声がバトンされると胸が高鳴る。彼らのクリスマス・アルバム同様、全盛期のテンプスの並はずれた余芸を愉しもう。
5. Yesterday - Marvin Gaye
僕の趣味だけの問題だが、そもそもビートルズの「イエスタディ」という曲に興奮したことがない。特に演奏にテンションの高まりを感じない。むしろこの曲は出来の良いカバーに軍配があがると思う。たとえばパーシー・フェイスのようなイージー・リスニングが素晴らしかったりする。その意味で、エンターテインナー志向のあったマービンには、ばっちりとあう。オリジナルより好きだ。
6. Long and Winding Road - Diana Ross
綺麗に歌って悪くない。ダイアナ・ロスの良いところが出ている。
7. Come Together - The Supremes
正直意図がわからないカバー。ただスプリームスだから許すか(笑)
8. She's Leaving Home - Syreeta
スティービー・ワンダーのトーキング・ボックスによるサポートがユーモラスかつ素晴らしい。シリータの歌は時にはりきりすぎ白ける部分もあるが全体としては出色のビートルズカバー。
そうだロジャー、あるいはザップってビートルズ・カバーやってたっけ。あったら聴きたい。
9. You Can't Do That - The Supremes
もとが好きな曲なので最後まで聴くことができました。
10. Fool on the Hill - The Four Tops
ああ、ここまでアレンジを変えるといいね。ボサノバ調の演奏に時にジャージーなコーラス。原曲の特に歌詞に込められた世界は破壊つくされているが音楽としてはおもしろい。
11. Michelle - The Four Tops
僕が苦手なビートルズ・カバーの典型。彼らのLPのなかだったら絶対に飛ばす。ただここまでビートルズ集だと免疫ができているので聴ける(笑)
12. And I Love Her - Smokey Robinson & the Miracles
スモーキー・ロビンソンが歌えばなんでもOK。これぞスウィート・ソウルの源。ただビートルズである必要がない気もするが---
13. Something - Martha Reeves & the Vandellas
苦手な部類だが、マーサの声と歌唱は素晴らしく、駄目だ駄目だと思いつつ聞き込んでしまう。ディープなディーバだ。
14. Let It Be - Gladys knight & the Pips
続くこれも反則。グラディス・ナイトに歌われてはどんな曲だって悪かろうはずがない。これでビートルズ・ナンバーでなければ、もっと素直に楽しめるのだが(笑)
15. Imagine - Diana Ross
意外といい。これも僕がジョン・レノンのオリジナルが演奏の完成度として好きじゃないからだろう(音楽としては価値があると思っているが)。メロディを綺麗に聴かせる。
16. My Love - Junior Walker
ああこれ最高ですね。歌がないのがいい。そもそもオリジナルが大味な名曲だから、うまいカバーは締まっているだけ優位。
17. My Sweet Lord - Edwin Starr
最後がまた素晴らしい。ソウルのよいところがちゃんと発揮された作品になっている。
我ながら嫌な例えだが、香草(パクチー)が苦手だと言う人に、極上のタイ料理のコースを食べてもらうようなものだと思った。最初の抵抗を超えてしまうと、その世界に慣れてしまい心地よくなってしまうというような。
正月からビートルズ。
我が人生も黄昏の時を迎え、こういうスタートはオツだ。
最後にまた余談だが、学生時代、若手三人として志ん朝、談志、小三治を聴いていた。それが志ん朝すでになく、談志も没した。当然、僕も順番待ちのかなり早いほうだと思っている。
せいぜい息の根があるうちに音楽を愉しむこととしよう。
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Comments
あけましておめでとうございます。
いきなりで申し訳ないですが…..
>開けましておめでとう!←誤字じゃありません。
あの〜、その下欄の
>からすカァーと鳴いて2013年でございます。
思いっきり誤字?な気がしますが
Posted by: ad | January 01, 2012 12:05 PM
adさん、お早い。
ご指摘の誤字はすぐ(初公開から一時間以内)に気がつき修正しました(汗
本年もよろしくお願いいたします。
Posted by: Sugar Pie Guy | January 01, 2012 09:05 PM
師匠!Rogerのカバー探しましたが見つかりません。Roger Troutman ii second coming とか Tribute to Roger Troutman はあるのですがなかなか良い感じですね。しかし、師匠 FINGAZZ まで聴いておられるとは恐れ入りました。
Posted by: Dr.Funkenstein | January 17, 2012 02:43 AM